2002-11-09
衝撃金融レポート!!「赤子の手を捻るより簡単!!」は事実だったっ!!

本日は読者からの衝撃的なメールをご本人のご了解を得ることが
できたのでここでご紹介する。この事実を認識し次の一手を謙虚
に考えるところまで来ているのである。

―――――――――――――――――――――――

長尾さん、皆さん。はじめまして。○◎●と申します。グローバ
ルネットのMLに参加させていただいてからこれまで一度も投稿を
していませんでしたが、初めて発言させていただきます。

小生は現在アメリカの●◎○◎●大学というところのビジネスス
クールMBA課程の二年生に在学中のものです。●◎○◎●大学ビジ
ネススクールは悪名高いゴールドマンサックスをはじめとする投
資銀行へ多数卒業生を送り込むことで有名な学校でもあり、そこ
で学んでいる小生もやはり「あいつらの側」の人間ということに
なるのかもしれません。個人的には投資銀行にはまったく興味は
ないものの、来年6月の卒業後は米系コンサルティング会社(こ
れも評判はよくないですね)に就職する可能性が高く、このへん
のジレンマには正直内心忸怩たるものがあります。将来日本の国
に貢献するための一里塚(莫大な学費借金の返済と「手口」の確
認とを主たる目的とする)であると自分に言い訳をしてみたとこ
ろで、米系コンサルの手先になるのだという事実に対するジレン
マは簡単に消えるものではありません。(そもそも日本でなく米
国のビジネススクールで学ぶということからしてある種の後ろめ
たさを感じずにはいられません)

さて、今回は長銀・リップル問題についてこちらでちょうど興味
深いできごとがありましたので投稿させていただきます。現在小
生は学校で"Corporate Restructuring"という企業の再生手法を学
ぶクラスを履修しています。LBO、MBO、Distressed Investment、
Leverage Recap、Tracking Stock、Leverage Buildup、
Rollup、、、などの投資銀行・バイアウトファームが飯の種とし
ている手法の多く(M&A、IPO以外ほとんどすべて)を扱うのです
が、ゴールドマンを始めとするプレイヤーからおっさん達がゲス
トスピーカーとして学校にやって来て、体験談を語る機会が多く
設けられています。

昨日、このクラスで"Distressed Invenstment(破綻企業への投
資)"を扱い、三名のゲストスピーカーがやってきました。そのう
ちの一人が、元ゴールドマンサックスパートナー、現PEファーム
社長、そして何より現リップルウッドのナンバ−2である
Christopher Flowersでした。

彼はいかに自分達がShinsei Bankをうまく運営しているか、いか
にしてLTCB(ここでは組合の方ではなく、長銀を指します)を買
収したかをとうとうと語りました。「瑕疵担保責任は大きかっ
た。あれがなければ買わなかった」と彼は言い切りました。

それは、本当に、何と表現していいか分からないほど、非常に悔
しい二時間でした。日本人留学生の多くが同じ思いであったらし
く(中にはそうでない人間もいましたが)、多くの質問がなされ
ました。

学生:「瑕疵担保責任などというアップサイドばかりでダウンサ
イドのない契約
    をよく結べたものだと思うが」
クリス(C):「ビジネスにおいてアップサイドを取り、ダウンサ
       イドをなくすのは原則。それに従ったまでのこと
       だ」
学:「リップルウッドはドイツ始めEUにも投資しているようだ 
   が、他の国でこんな都合のよい契約はあるのか」
C:「いや、私の知る限りない」
学:「日本におけるパブリックセンチメントの現状についてはよ
   く知っていると思うが、今後日本で投資する場合も瑕疵担
   保特約を付けることができると思うか」
C:「いや、もう無理だと判断している」

また、まったく納得性の低い以下のような受け答えもありまし
た。

学:「10億円というのはべらぼうに安い買値だが、どういうプ
   ロセスで買い手が決まったのか。何が決め手か」
C:「我々のバリュエーションが良かったということだろう」

(そんな馬鹿な!)

最後の日本人学生からの質問は以下のものでした。

学:「日本政府から瑕疵担保特約を引き出すのは大変だったか。
   日本政府はタフなネゴシエーターだったか?」
C:「いや、イージーだった(笑)」

その瞬間、私は思わず”Shit!”と短く叫び、隣に座っていた日系
米国人(彼は国籍は違えど日本への愛国心に溢れた男です)も舌
打ちをしたのです。

日本政府は、日本という国は、完全に舐められている。実際、リ
ップルとゴールドマン(GSは政府側アドバイザーでありながら。
高額の報酬を得ておきながら。)にとっては、その時点の日本政
府から国際的に驚愕の的となる条項を引き出すことなど赤子の手
をひねるよりも簡単なことだったのでしょう。

本来リスクの高い”Distressed Investment”では、彼らは最低で
も25%もの高利のIRRを見込んで買収価格を算出します。このデ
ィールはIRRだけを見ても信じられないほどおいしいものでした。
その上、リスクはなしなのですから、これはもう世の中の経済原
則(リスクなきものにリターンなし)に反した、背徳的なまでに
おいしいディールだったといえるでしょう。「こんなおいしい話
はもう今後ないだろう」、とクリス・フラワーズ自身感じている
ように見受けられました。


私は時々、何とかして日本に優れたバイアウトファームを作れな
いものか、と思うことがあります。優れた企業再生スキルと経験
をもつ日本人による、日本資本のファーム。

複数の優れた日系バイアウトファームが公平に競い合うようにな
れば、企業倒産=即従業員の多くが路頭に迷う、という図式も変
えられるでしょう。「日本的な」企業再生モデルを作ることがで
きるかもしれません。そうすれば、銀行の不良債権の処理も進む
でしょう。

しかしこれは、虚弱体質で死にかけている人に「筋トレをしてあ
と20キロ体重を増やそう」と言っているようなもので、あまり
にも問題と対策の時間軸に乖離のありすぎる夢想なのかもしれま
せん。それでも、私はこの夢を捨てられないのです。日本人のタ
フなプロフェッショナルで構成された日系のバイアウトファーム
が、日本の倒産企業を次々と買収・再生し、日本の多くの
industryにダイナミズムを再び生み出す日。そしてやがては日本
だけでなく、欧米・アジアにも進出し、Kマートのような倒産企業
を次々に買収して再生していくような日が来ることを信じていま
す。

初めての発言で長々と書いてしまいました。ご容赦ください。

長尾さん、日本も寒いことと思いますが、街頭頑張ってくださ
い。極寒のアメリカより応援しています。

来年夏に帰国したら是非オフ会に参加させてください。皆さんの
優れた見識に触れられることを楽しみにしています。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

如何だろうか。私はこのメールを読んで完全に固まってしまっ
た。ということは、私自身もまだまだ現実に対する甘えがあると
いう証拠なのであろう。我々の周辺で起きていること、これが事
実なのである。

「私はこの夢を捨てられない」・・・・・・実に素晴しい。本当
に有り難い。新しい同士に巡りあえた感動しきりの、週末だっ
た。