2002-10-14
F1に見る日本排除的傾向

事務所びらきは予想以上にたくさんの方々にご来訪いただき、和やかに
開催させていただいた。また、遠方より祝電、FAX、花束等々頂戴し、
この場を借りて感謝する次第。ありがとうございました。※連絡先のわ
からないFAXへの御礼が出来ないで困っています。ご連絡ください。

終わったものの、風邪が治らず深夜は咽喉の痛みに耐え切れず眠れな
い。久しぶりにF1を見てしまった。佐藤琢磨が日本人として久し振りに
ポイントを得た。「日本はもっと強かったのになぁ。」そして、「随分
ルールが変わったなぁ。」と激怒するのであった。

87年中嶋悟が日本人初のフル参戦ドライバーとなった前後は、日本にま
だブームは起きていなかった。87年の鈴鹿もまだまだ熱狂的というまで
には至らなかった。中嶋が日本人初にして鈴鹿でもポイントを得て最終
コーナーを歩いてきた。フェンス越しに中嶋が我々の前を満面の笑みを
浮かべて手を振りながらピットに帰っていく。「英雄」というものを初
めて見た気がした。

F2で恐るべき強さを誇るものの、マスコミは当時の中嶋をあまり取り上
げず、星野一義をメインに当てていた。私はおかしいと思っていた。日
本で一番早いのは名実ともに中嶋悟であると思っていた。中嶋の著書の
「俺は運が良かったと一人よく言われることがある。実際にそう思う
し、運の好い奴だと思っている。しかし、俺は運を天に任せることはし
なかった。いつだって、目標に向かって努力していた。」という部分
に、当時営業実習をしていた私は随分エネルギーをもらった。彼は単に
早いだけではなかった。走る広告塔とも言われるF1の世界では、企業と
の折衝能力が大きなウエイトを占めてくる。モータースポーツ馬鹿では
相手にされない社交界的部分も存在するのである。中嶋はイギリスに拠
点をおき、言葉から文化から、企業人としての必要知識、ネゴシエーシ
ョンに至るまでを取得し、その背景に「ホンダ・ターボエンジン」を引
っさげヨーロッパに乗り込んだのである。

86年のウイリアムズホンダのネルソンピケ、ナイジェルマンセル二人
の同チームによるシルバーストーンでのサーキットでのデッドヒートが
今でも忘れられない。「ホンダ・ターボエンジン」は既に世界一だっ
た。開発の中心者はあのCVCCエンジンを開発した櫻井淑敏氏だった。彼
は中嶋のドライバーテクニックと、企業人としての才能に賭け、ホンダ
和弘研究所に彼を呼び出しF1への切符を手渡した。

中嶋の初めてのパートナーはあの不慮の事故死を遂げた、アイルトン・
セナだった。既に音速の貴公子といわれていた8歳も年下のセナから彼
はあらゆるものを吸収したという。既に彼は33歳。最年長の新人ドライ
バー。彼に時間はなかった。何故「雨の中嶋」といわれたか、後に彼は
著書で「俺には他のドライバーほど体力がない。でも雨になるとマシー
ンにも限界があるからスピードを落とさざるを得ない。その場合、体に
かかるGが減るから力でドライビングするというよりはテクニックの勝
負となる、テクニックでは負ける気がしなかった。それと、エンジンも
ね、、、」。あまりの日本人の善戦にFISAは危機感を強めた。日本には
世界最高峰のエンジンがある。ドライバーも育ってきている。経済的に
も世界一(当時はバブル絶頂)であり、このままではヨーロッパの文化で
あるF1が東洋人に駆逐される、とまで言ったか言わないかはわからない
が、予想通り禁断の奥の手を出してきた。

ターボエンジンの廃止規定である。当時1500ccで800馬力を出していた
ホンダエンジンに、3500ccのNAエンジンが敵うはずがなかった。加えて
燃費の問題。当時はピットでの給油は許されなかった。どんなに早くて
も最後の一周でガソリンがなくなればリタイアとなる。そういう時代だ
った。ホンダエンジンはまずもって燃料切れになることなどない優秀な
エンジンであった。しかし、今は給油が許されている。「燃費という技
術」が日の目を浴びることはない。むしろ、ジェットエンジンに如何に
近づけるかという燃料開発のほうが重要。

ずるずると何を記してきたかというと、ルール改正という禁断の手を使
ってくるヨーロッパ勢の攻勢の中で彼等は戦っているという現実を認識
して欲しいのだ。単にモータースポーツはかっこいいというものでな
く、国と国とのぶつかり合い、企業戦争なのだ。そして、エンジンとい
うモノづくり、ドライビングテクニックという職人技が日本チームには
備わっているのだが、それを「させない」規定の変更により、何が何で
もヨーロッパの文化を守りたい彼等の思考回路をF1を通しても理解でき
るのだ。

長野五輪の「日の丸飛行隊」。その後スキー板の長さの規定改正がなさ
れ日本人の体型には不利な環境が出来上がってしまった。これも同じこ
と。外交も同じこと。………どうも、ヘラヘラとF1を見ている気分には
なれなかった。