2008-04-10
優先すべきは医療か公共事業か?

高度成長期を経て、成熟期に達し、未だかつて経験したこ
とのない少子高齢化社会に突入した我が国において、予算
として優先すべきは医療か、公共事業か?などという、わ
かりきったこと、それでも意図とする方向とはまったく逆
に進みつつある問題を、怒りをもって考えてみたい。

年末年始、網膜剥離を患い、仲間達が必死に活動する中入
院生活を余儀なくされた。加えて、大阪府知事選挙の準備
も支援者の方々に事実上丸投げし、大変ご迷惑をかけた。
ただでは済まされないと、短期間の入院生活から学ぶべき
ことはなかったかと考えた。私の手術は朝8時30分から始ま
った。術後、執刀医からの診断を受ける旨告げられていた
が、一向に診断に来られない。深夜、11時30分を回った
頃、「遅くなってすみませんね、ご気分は如何ですか?」
とベッドで診断。聞けば、つい先ほどまで連続して手術を
していて、これから、術後診断。その後、夜勤と言うこと
だった。30代前半の先生ではあるが、勤務は過酷なようだ
った。眼科ですらこんな状況だから、内科、外科、そし
て、救急は想像するにゾッとする。

調査によると、一ヶ月の残業時間が80時間を越える医師は3
割以上、1ヶ月休みなしの医師もは3割以上。労働基準法を
上回る超過勤務が公然と許されているのは、医師とマスコ
ミくらいのものだろう。さらに、当直明けの手術参加が゛
いつもある゛と答えた医師は、31%、゛しばしば゛が
28%、゛まれ゛が13%、゛しない゛は2%であった。36時間
当直明けの脳はお酒を飲んだときと同じくらいの判断能力
が低下。医師もたまらないだろうか、手術を受ける患者も
たまらない。医療ミスが起こることもわからないでもない
ほどの勤務状態である。更には、医療の進歩により、医療
現場における゛不確実性と医療の限界゛という言葉が許さ
れず、ますます医師が追い込まれる現実もあるようだ。

それでも、医師の数が多すぎるとする政府が発表する数字
については様々なからくりが存在する。アメリカでは医師
の数はフルタイムで勤務している医師だけをカウントす
る。しかし、日本では医師免許を持っているものすべてが
カウントされている。つまり、免許を持っているが引退し
ている数もカウントされているのである。これは現場理論
に即していない。

日本は病床数が過剰であると言うが、ここにもからくりが
存在している。日本の病床は一般病床と療養病床に大別で
きる。ある程度の回復期を迎えると、慢性期として療養病
床に移るのである。これに対して、アメリカの場合、所
謂、病院(ホスピタル)と、特別養護老人ホームなど、医療
と福祉が一体となったナーシングホームとに区別される。
日本の病床が過剰であるとする数字では、アメリカのナー
シングホームが意図的に除かれているため、゛日本の病床
数は過剰である゛との嘘がまかり通っているのである。

政府としては医療保険は病院で治療させ、慢性期の場合は
介護保険制度で賄いたいというところであろう。日本人の
約8割は病院で亡くなる。その数を減らすことで、医療費を
削減したいのである。慢性期においては、医療保険ではな
く介護保険でまかないたいのである。

そして、後期高齢者制度の実施である。75歳以上の2200万
人が対象で、うち200万人は被扶養者つまり、収入が180万
以下の扶養される立場の経済的弱者の高齢者である。75歳
以上と言えば、我が国の高度成長期を牽引してきた昭和の
大切な先代達である。ご恩返しこそしなければならない時
に、保険料負担、自己負担の増加、年金天引き、滞納1年で
保険証の取り上げ、滞納1年半で給付差し止めで全額実費、
保険で受けられる医療の制限。という惨い仕打ちを゛強行
採決゛したのだ。70歳から74歳の方も窓口負担は1割から2
割と2倍となった。因みに、大阪府は年間保険料が全国で一
番高く101,449円。大阪府の広域連合議会でこれに賛成した
議員の落選運動が起こりそうな勢いである。

消えた5000万件の年金問題も417万件と8%しか解決してい
ないのに、保険料のずさんな管理や、支払い不足はうやむ
やにしておきながら、年金天引きできるところからはあく
までも召し上げるつもりである。゛年寄りいじめ゛もここ
まで来ると、我が国には道義とか秩序は存在しないと断言
をせざるを得ない。

では、何故ここまでも、医師の数も、病床も過剰であると
政府は主張したいのか?慢性期から終末期を自宅で迎えさ
せたいのか。後期高齢者制度を実施したいのか?国家財政
を揺るがしているのは医療費であるという゛定説゛をでっ
ち上げることで、公共事業予算を守りたいのである。そう
としか考えられない。

一般会計と特別会計をあわせて、公共事業に計上されてい
る予算は、年間50兆円。これに対して、医療に計上されて
いる予算は31兆円。そのうち実質的に国が負担しているの
は10兆円に過ぎない。公共事業予算の5分の1である。

道路自体がどれだけ割高かは先のコラムで触れた。加えて
記すならば、高速道路に1キロ置きに設置されている緊急電
話。一基250万円で、原価は40万円。6倍以上に水増しされ
て税金が投入されている。そして、何処かの誰かが儲けて
いるのだ。電柱は1本50万円、ガードレール1メートル2万
円、防波堤たるテトラポットは10万円だが、果たして原価
は幾らなのであろうか。

公共事業で儲けたい一部の輩と、天下りを確保したい官僚
と、これを認める政治家の利害関係が、日本の医療を確実
に蝕んでいる。

※参考資料・・・誰が日本の医療を殺すのか・本田宏著・
洋泉社新書